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じつは新しいノーベル経済学賞とおすすめ現代経済学の1冊

長沼伸一郎著『現代経済学の直観的方法』(講談社刊・2020年4月8日第1刷発行・ISBN978-4-06-519503-1 C0033)定価2400円(税別)オーダースーツ アスター 千葉県 佐倉市 うすい 八千代市 村上

秋も深まる10月に入ると、ノーベル賞受賞の報道が世界を駆け巡ります。そのなかでも日本人に縁のないノーベル経済学賞の創設が、じつは1969年と新しい部門であることはあまり知られていません。
 

ノーベル賞の本場・スウェーデンの国立銀行(スヴェリイェス・リクスバンク)が賞金の自己負担とともに、経済賞の設立をノーベル財団に申し出て平和賞につづき6番目の賞として認定されています。
 

ちなみに生涯独身を貫いたノーベルが遺書にしたためた創設時の部門は、物理、化学、生理学・医学の三部門。つづいて熱心な読書家であり膨大な数の蔵書を有していた氏が世界の作家たちに報いるためとされ創設されたのが、文学賞です。
 

最後に創設の理由が歴史家のなかでもあいまいとされている平和賞が加えられ、5つの部門による第1回ノーベル賞の授賞式が1901年に開催されています。その後半世紀以上を経て、第1回のノーベル経済学賞が2名の経済学者に授与されました。
 

クイズ王選手権的な知識としてお伝えしますと、栄えある第1回の受賞者は2名。スウェーデンと同じく北欧ノルウェーの経済学者であるラグナル・A・フリッシュと、オランダのヤン・ティンバーゲンです。
 

ノーベル経済学賞の選考過程は――活躍している経済学者を選ぶ前に、時代の潮流をなす経済学のなかの一分野とその理論にスポットをあてて人選を行うといわれています。
 

選考過程とは反対に、受賞者に光があたり世間では人名のみが独り歩きする状況がつづいているのは物理学賞などと同様です。
 

複雑になりすぎた社会と手元から遠くに離れたような経済の状況を、ここで基礎からリカレントして自分なりの理解につなげたい。読書の秋でもあるので1冊なにかをと思う方に、おススメの本をお伝えいたします。
 

長沼伸一郎著『現代経済学の直観的方法』(講談社刊・2020年4月8日第1刷発行・ISBN978-4-06-519503-1 C0033)定価2400円(税別)です。
 

著者は早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)を卒業し同大学院を中退後の1987年に『物理学の直観的方法』を上梓し、理系書の世界で”一大センセーション”を巻き起こした平易な記述を得意とするもバリバリの理系思考の「物理屋」さんです。
 

その長沼氏が記した「おわりに」と題されたあとがきの抜粋を、ご紹介します。物理屋がどうして門外漢の経済書を出版したのかとの理由を
 

それは何よりも、科学者の社会的な無力ということを見てきたからである。現在の世の中では特に日本の場合、科学者や技術者は「役に立つ使われ人」でしかない。これはノーベル賞級の業績を上げてさえも同様で、完成した製品を披露して、拍手とともに「ご苦労様でした」と言われてしまえば、もうその後は国や文明の行く末を議論する場からは丁重に退出を求められている。
 

長沼氏はだからこそこの苦境を次世代には渡したくないという思いから、理系が理解しやすい書物を自ら残して「経済を理解し社会に発言力のある科学者」を育てたいとその動機を述べています。
 

経済というものが全くわからず予備知識もほとんどない(ただし読書レベルは高い)読者が、それ1冊を持っていれば、通勤通学などの間に1日あたり数十ページ文の読書をしていくだけで、1週間から10日程度で経済学の大筋をマスターできる。
 

と、長沼氏が太いゴシックで”力筆する”経済書。この文言どおりふだんから読書に慣れ親しんでいる方ならば、移動の少ないテレワークの合間にでも気分転換にとサッと読了できるお勧めの1冊です。
 

巷間喧しいGOTOキャンペーンの顛末にコロナ禍後の「脱・すごもり」需要など、さまざまな経済と社会の事象を俯瞰し詳細に理解する基礎が培われる。
 

一助になると、思われます。
 

オーダースーツ アスター
http://www.sebiro-aster.com/

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